甲子園浜での潮干狩りについて(潮干狩り禁止条例)

法律施行前は...

 甲子園浜では以前から地元の人を中心に潮干狩りが行われていた。3月上旬頃から満月前後 など潮がよく引き、干潟が海の底から現れてくる日にはどこからともなくバケツと熊手を持っ たおばちゃんや子供がやって来てあちこちでアサリを掘っていた。
 "あんなに取ってどうするんだろう?"と思うぐらい大きなバケツいっぱいにアサリを入れて いる人。自分では掘らずにほかの人が取り残し、掘り返した砂から顔を出しているアサリを 拾っている人などそれぞれのスタイルでアサリを集めていた。

 甲子園浜で潮干狩りができる場所は大きく2箇所。下の写真で「A」と「B」で記した箇所 がおおよその位置になる。


 このうち「A」の場所は潮がちょっと引くと現れるので、潮干狩りシーズンの干潮時刻に は毎日のように人が訪れにぎわっている。また地元の幼稚園などで引率されてきた園児が 磯遊びをしていることもある。
 「B」の位置は潮が大きく引く日でないと干潟は現れて来ないが、「A」地点とは異なり 砂地ベースのため掘りやすくヘドロも少ないため、リピーターには好まれる場所となってい た。


 潮が引いて干潟が現れるのを見計らって訪れるのは潮干狩りに来る人だけではない。カニや ゴカイ、ヨコエビ、カレイ、魚の稚魚など豊富にいる生き物を食べにシギやチドリなどの渡り 鳥も多く飛来する。
 シギやチドリなどの渡り鳥は冬を南の赤道近くで過ごし、夏には北のシベリアまで飛んで 行く。潮干狩りシーズンはちょうど南から北に渡る途中にあたり、日本各地にわずかに残る 干潟などで餌を食べて体力をつけながら渡って行く。

 甲子園浜に訪れるシギやチドリなどの野鳥は公園にいる鳩などとは異なり人には慣れていな い。そのため潮干狩りスポットとなる「A」地点には昼間はシギやチドリはほとんど訪れない。 「B」地点でも同じで人がいない夜間や早朝を除いてはシギやチドリが訪れることはほとんど ない。
 さらに2004年などは胴長と鋤簾(じょれん)を持ったアサリ取りの人も現れ、「B」地点の さらにずっと右側にまで行く人も来るようになった。そのためさらに渡り鳥が干潟から飛んで 逃げることが増え、甲子園浜の干潟の多くで渡り鳥が十分に休めない状態になった(と言われ ている)
 十分に休息を取って餌を食べないと、長距離を飛ぶ渡り鳥は途中で力が尽きて海に落ちるな どして死んでしまうことも考えられる。

 そのような事態を踏まえて野鳥を守るために、法律を整備しようという風潮が生まれた。 具体的には西宮市の条例で「渡り鳥が飛来する時期は干潟への立ち入りを禁止し、これを 破った場合は5~20万円以下の罰金」にしようされた。自然を守るために立ち入りを制限 することはあるが、罰則を設けるというのが珍しく一時期新聞でも話題となった。
 条例を作ろうというのが具体化した2005年にはロープにより「A」地点への立ち入りを 制限した。しかし法律的な根拠はなく、ロープを乗り越えて「A」地点で潮干狩りをする 人が多くいた(それでも2004年以前よりは「A」地点での潮干狩り人数は減った)。


潮干狩り禁止条例とは?

 上で書いたように潮干狩りシーズンにはシギやチドリなどの渡り鳥が餌を食べるため に甲子園浜に訪れる。昔は千羽単位で飛来した渡り鳥も近年では数百羽と激減している ことが分かっている。渡り鳥が飛来する数が減少した原因に関しては数多くの説がある。 "一概に甲子園浜で干潟内に人が入るから飛来数が減った"とは言い切れないが、渡り鳥 が安心して餌取りできる干潟が多ければ、それだけ渡り鳥が体力をつける助けになる。
 渡り鳥を守ることは自然環境の維持と生物の多様性(生物の種類の多さのようなもの)を 保つことにつながる(と考えられる)。そのためにこれらの野鳥が安心して干潟で餌を食べ れるよう、人の立ち入りを制限するための条例として作られた。


 潮干狩り禁止条例は「自然と共生するまちづくりに関する条例(西宮市条例第32号)」 として西宮市が制定している条例に基づいている。この条例は甲子園浜に関わらず、西宮 市内の自然環境を守るために作られたものとして作られている。内容は自然保護に関する ものとしてはかなり厳しく、条例を破ると5~20万円以下の罰金となることが定められてい る。
 この条例では自然保護地区、生物保護地区、景観樹林保護地区の3つが規定されており、 甲子園浜が「生物保護地区」に指定され、この条例に基づき4月と5月に立ち入りが規制さ れることとなった。


 具体的には上の写真の赤で囲んだ海の部分が生物保護区に指定された。 潮干狩りスポット「B」地点が保護区内に入っている。



何がダメで何がOKなのか

 具体的な条例文に関しては西宮市のホームページ内 (リンクが切れている場合はGoogleなどで「自然と共生するまちづくりに関する条例」の ように検索すると見つかります)に任せるとして、実際に何が大丈夫で何がダメな のかを考えてみると...

4~5月 それ以外
立ち入り ×(罰金5万円以下)
潮干狩り ×(罰金20万円以下) ×(罰金20万円以下)
釣り ×(罰金20万円以下) ×(罰金20万円以下)
工事 ×(罰金20万円以下) ×(罰金20万円以下)
※間違えているかもしれません。理由は以下に書いています。

 ということになると考えられる。もちろん市長やその許可を得たものに関しては例外で (何をしてもというわけではないが)4~5月の立ち入りや工事などをすることができる。

 ダメなことに関しては条例で定められた罰金規定により3つに分けることができる。

【5万円以下の罰金】
・標識を動かしたり壊すこと。
・立ち入り制限地区に入った場合。
・市の立ち入り調査を妨害した場合。
・(災害時や人命救助時に立ち入り、後で)届出をしなかった場合。

【10万円以下の罰金】
・工事や土石の採取をした場合。

【20万円以下の罰金】
・市長が指定する野生生物を採ったり、生物多様性を乱した場合。
・市から命令された現状回復、計画中止、計画変更を守らなかった場合。


 立ち入りが制限される4~5月にはそもそも中に入ることができないので、潮干狩り が(「B」地点では)禁止というのは分かる。しかし4~5月以外に関しては条例をき ちんと見ないと判断できない。
 条例を見て気づく微妙な点は、「市長が指定する野生生物」と「生物の多様性」 という罰金20万円以下となる罪についてだ。

 まず(少なくとも私がインターネットで調べた限りは)市長がどの生物を指定して いるのかが不明。ここにアサリやサルボウガイが含まれている場合は潮干狩りは確実 に禁止となる。しかし市長がこれらの貝を指定していなければ4~5月以外は潮干狩り がOKとなる可能性がある。
 とは言うものの潮干狩りは干潟を掘り返しアサリを獲る行為がために「生物多様性を 乱す」と考えることもできる。そのためこの項にひっかかり4~5月以外も潮干狩りが 禁止と考えることもできる。(逆に干潟に酸素を送り込み生物の多様性を保てると考え ることもできるが、これは揚げ足論になりかねない)。

 つまり生物の多様性という項があるため、(市長がアサリを保護種に指定している か否かに関わらず)立ち入りが許可される4~5月以外も(「B」地点では)潮干狩りは 禁止と考える方が無難と言うことになる。まったく同じ考え方で保護区内でスズキやチヌキチヌ、サヨリなどの釣りをすることもあきらめた方がいいかもしれない。

※生物保護区に指定されていない「A」地点は当然ながら時期に関 わらず潮干狩りはOKです。




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