必要なモジュール

 走査型顕微鏡はその構造的に必要最低限以下のモジュールが必要だと考えられる。
   ・鏡筒
   ・電子銃
   ・電子レンズ
   ・真空ポンプ
   ・試料ステージ
   ・二次電子検出器
   ・電子線偏向制御回路
   ・高電圧発生器
   ・制御用コンピュータ
 必要なモジュールをざっと眺めてみるだけで製作過程で問題となるであろう点が多 く見つかる。
 初期段階からネックになりそうなものは鏡筒および真空系だろう。電子顕微鏡の製作 過程で最大の障害がこの問題になると思われる。これができなければしょっぱらから製 作計画が挫折する。次が電子銃と電子レンズ関連だがこちらはブラウン管関係の教科書 や技術書をあされば資料は多く見つかるだろうからそこまで大きな問題にはならないだ ろう。




鏡筒は?

 製作過程で電子線の制御試験のためにも早い段階から用意する必要あり。
 まずはこの問題が大きい。電子線を飛ばす必要がある故に鏡筒内は高真空にしなくては ならない。ただの真空容器であれば密閉した容器を用意するだけで済む。しかし、さらに 鏡筒内へ配線などを出し入れするためのポートも必要になる。
 各種継ぎ部分の真空バルブやそこに使うOリングなども必要になるであろうし、真空グリ スなどからのガス放出まで視野に入れて考えなければいけない。また材質は肉厚のステン レス鋼などにせざるを得ないと思うのでその重量も馬鹿にならないように思う。
 既製品で用意できるとは考えられないので溶接などの技術および設備も必要になると思 われる。しかし真空バルブ1つの値段にしても新品で15万円程度するように部品1つ1つを とっても非常に高価。
 対物レンズよりも上の部分は電子線を制御するためのコイル類が必要になるので、磁気 をさえぎらないガラス管を利用、対物レンズよりも下はステンレスのボックスを用意する というのがいいかもしれない。
 真鍮や黄銅といった金属を真空中に持ち込むと蒸着が起きてしまうなど注意すべき事項 が多い。「真空」を甘くみると痛い目に遇うので真空ハンドブックのような教科書もそろ える必要あり。


電子銃は?

 電子顕微鏡の心臓部とも言える電子銃。
 既製品を購入しなくとも、テレビなどのブラウン管を分解して得られる電子銃を使うこ とができるかもしれない。これは電子レンズおよび偏向コイルについても同様に当てはま る。というかブラウン管を流用すれば、ほとんどの部分で手を抜くことが出来る気がする。 もともとのブラウン管は閉じた真空系なので真空ポンプなどは当然ながら不要。電子線制御 の初期実験には最適かもしれない。


電子レンズは?

 テレビから流用できるとは思うが...理論的な面からして勉強する必要あり。現在ま ったく知識がないため具体的な問題点を考える以前という状態。


真空ポンプは?

 適当な既製品を用意すればいい...程度に考えていたが、達成真空度をできれば10 -3Pa以上にしたい、という点を考えるとそうもいかない。最低でも2段構え の真空ポンプにしなければならない。
 油回転ポンプや油拡散ポンプは電子顕微鏡でよく用いられているポンプだが"油"の面 倒を見るのが面倒なので使いたくはない。なんとか乾燥膜系のポンプとターボモレキュ ラーポンプを組み合わせた構成にしたい。

 ちなみにJEOLのJSM-T200という走査型電子顕微鏡では油回転ポンプ とロータリーポンプの2段構え、7×10-4Paで運転している。ターボ分子ポ ンプはちょっと大掛かりなので、こんなのが手軽でいいかもしれない。

真空計は?

 ポンプを動かせば真空は得られるが、どの程度の真空になったのかを見るため真空計 が必要になる。
 ブルドン管真空計のような大気圧近い圧力計は安価かつ容易に手に入るが、それ以上 の中真空や高真空での真空度計測には電離真空計などの特殊なものを使う必要がある。 これらの真空計は電源を必要とするし大気圧で動作すると壊れるなど操作自体も面倒。 なにより中古で出回ることも少ないであろうし新品は30万円程度と高価。
 あまり高い真空を必要としないのでピラニ真空計で十分。電離真空計も用意しておい て必要が生じたらこちらも設置することにするのがいいだろう。


試料ステージは?

 最終的には電子制御のXYステージにすべきだが、テスト段階では固定した金属板程度 で十分。さらにテスト用として電子線の位置を視覚的に検出できるように蛍光板を置け ば完璧だろう。ちなみに蛍光板(蛍光物質が塗られたガラス片)はブラウン管を破壊す れば取り出せる。


二次電子検出器は?

 既製品を用意するのが理想的。
 テスト時から本番で使う電子増倍管を用意する必要あり。浜松ホトニクスで販売され ているものを用意するのがいいだろう。とは言うものの新品で購入するのも気が引ける。 蛍光板と光電子増倍管を組み合わせたものを利用するのがいいかもしれない。
 二次電子を検出するには1kV程度の電圧が、電子増倍管を動かすのにも高電圧が必要と なる。動かすための高圧電源はソケットに内蔵されているタイプもあるが、二次電子を 引き寄せるための高圧はそもそもどのように印加すべきかも不明。


電子線偏向制御回路は?

 デジタル回路程度で済むだろうからたいした問題はないと思うが...高電圧系をも 制御しなければならないのでその部分はディスクリート部品からして高圧のものを用意 する必要あり。とは言うものの主要な部分はテレビから流用できる気がするのでそこま で大きい問題とは思われない。


高電圧発生器は?

 電子銃から電子加速器、二次電子検出器、真空計までとにかく高電圧を必要とする部 分が多い。またリップルが多いと精度が非常に落ちるのでできるだけ安定した電源にす る必要あり。
 性能的な問題点は残るが既製品の中古で済ますのがいいだろう。


制御用コンピュータは?

 電子顕微鏡を製作する過程で1番簡単な部分。いくらPIOが必要になろうと画像処理関 連ソフトが必要になろうと問題なし。唯一問題なのはサンプリング速度程度だろうが、 遅くすればいいだけなので大丈夫だろう。



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