電子顕微鏡

 光学顕微鏡が「光」(可視光線)を用いているのに対して、電子顕微鏡は「電子線」を 用いて観察する顕微鏡だ。
 光学顕微鏡は可視光線(400~760nm)を用いているため理論的な最大分解能がおおよそ 200nm程度となる。この程度の分解能であっても目的によっては十分だが、HIV(直径100nm )などのウイルスや微細な試料を観察するのには不十分となる。

 分解能δは観察に用いる波長λおよびレンズの開口数n sinα(n:屈折率、α:対物レ ンズ開き角)によって δ=0.61λ/(n sinα) と表すことができる。レンズの開口数は 最大でおおよそ1.6程度、可視光の波長が550nm程度なので理論的な最大分解能は200nm程度 となる。
 また焦点深度dは d=0.61λ/(n sinα)2 と表され、上の条件では131nm となる。

 光学顕微鏡が光の波長によって分解能が限られているのに対して電子線を用いる電子顕 微鏡は理論的には加速電圧が高ければ高いほど、走査型電子顕微鏡では電子線を細く絞れ 絞るほど高分解能での観察が可能となる。

 電子線の加速電圧Vと波長λ(nm)の間には λ=√(1.5/V) の関係がある。分解能δは δ=0.61λ/(n sinα) なので加速電圧の平方根に反比例して分解能が高くなる。
 また電子線はその原理的に10mrad程度の開き角αにする必要があるため開口数は非常に 小さくなる。そのために焦点深度dは d=0.61λ/(n sinα)2 より大きくな り、非常に大きな焦点深度が実現される。

 光学顕微鏡に生物顕微鏡や金属顕微鏡というような分類があるように、電子顕微鏡にも 大きく分けて2つの種類がある。透過型顕微鏡と走査型顕微鏡だ。透過型顕微鏡は試料を 通り抜けた電子線、走査型顕微鏡は試料から放出された二次電子線を検出することでそれ ぞれ試料の内部や表面の観察に用いられる。
 電子線はその特性上、空気中では直進させることができない。そのため試料などは真空 中に置かれる。そのため生きた細胞や水中の微生物など水分が多い試料はそのままでは観 察することができないなどの欠点もある。
 しかしながら高分解能であることは言わずもがな、電子線の制御は電気的に行われるた め倍率の任意可変が行えたり、(走査型顕微鏡では)非常に深い焦点深度での観察が可能 など多くの利点がある。


透過型電子顕微鏡

(TEM:Transmission Electron Microscope)
 試料を透過した電子線を検出する。光学顕微鏡での透過型顕微鏡&倒立型顕微鏡に対応する。
 結像は「面」として一度に行われる。
 結像には電子線が適度に透過および散乱する必要がある。そのため、試料を薄くスライスする などの前処理が必要であり、この作業が面倒。
 使用する加速電圧は20kV~200kVもしくはそれ以上と走査型電子顕微鏡よりもエネルギーが高 い。そのため走査型電子顕微鏡よりも分解能が高い。


走査型電子顕微鏡

(SEM:Scanning Electron Microscope)
 試料から放出される二次電子線を検出する。光学顕微鏡での金属顕微鏡や実体顕微鏡に対応す る。
 結像は「点」の連続で行われる。これが「走査型」と呼ばれる所以でもある。
 結像に用いられるのは試料表面から10nm程度の範囲から発せられる二次電子(と反射電子)に なる。そのため試料表面の観察が可能。また試料の前処理は比較的簡単。
 使用する加速電圧は数百V~40kV程度と透過型電子顕微鏡よりもエネルギーが低い。また、走査 型電子顕微鏡では電子ビームを絞り込む必要があるため透過型電子顕微鏡よりも分解能が低くなる 。



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