DNA酸化傷害における活性酸素と鉄の関係

 1O2、H2O2、OH・といった活性 酸素種は生体内分子と高い反応性を有する。DNA、RNAとその前駆体はこれら活性 酸素種のターゲットとなり以下のような酸化傷害をもたらす。
・7,8-dihydro-8-oxoguanine(8-oxoguanine; 8-OG)
・1,2-dihydro-2-oxoadenine(2-oxoadenine; 2-OA)
・thymine glycol
・DNA鎖切断
・8-oxo-7,8-dihydro-2'-deoxyguanosine 5'-triphosphate(8-oxodGTP)
・2-oxo-1,2-dihydro-2'-deoxyadenosine 5'-triphosphate(8-oxodATP)

 これらの酸化傷害の修復には主に以下の酵素が関わっている。
・MutM(8-OG glycosylase)
・MutY(Adenine glycosylase)
・MutT(8-oxodGTPase)
・EndoIII(thymine glycol glycosylase)
・EndoVIII(thymine glycol glycosylase)
 これらのDNA酸化傷害修復系の働きにより、突然変異率が10-8~ 10-9に抑えられている。

 1O2、H2O2、OH・の反応として 以下のHarber-Weiss/Fenton reactionが知られている。
 Fe(III) + 1O2 → Fe(II) + O2
 H2O2 + Fe(II) → OH・ + OH- + Fe(III)
 この反応により、生体内での鉄と1O2の関係が重要である ことが示唆されている。今回の研究では
・Fe(III)の細胞内への取り込みを抑制するFur遺伝子fur
・H2O2をH2Oに分解するカタラーゼ遺伝子katGkatE
1O2をH2O2へ変換するsuperoxide dismutase(SOD)遺伝子sodAと、sodB
・Fe(III)の細胞内取り込みを行なうTonB遺伝子tonB
の破壊株で実験を行なった。

 細胞内Fe濃度はWTやSodASodB欠損株よりもSodASodBfur欠損株が2.4倍以上高かった。

 DNA酸化傷害8-oxoG、FapyG、2-oxoA、FapyAはいずれもWTやSodASodB 欠損株よりもSodASodBfur欠損株が多かった。酸化傷害では ないxanthineによる傷害はどの株でも同程度であった。

 rifampicin耐性変異率の実験では、WTやSodA、SodB欠損株、Fur欠損株よりSodA、SodB 、Fur欠損株の方が10倍以上変異率が高かった。同様にWTやKatG、KatE欠損株、Fur欠損株 よりもKatG、KatE、Fur欠損株の方が変異率が高かった。
 この結果が鉄の取り込みによるものであることを確かめるため、TonB欠損株で同様の 実験を行なったところ、SodA、SodB、Fur欠損株よりもそれら+TonB欠損株で変異率が減少 した。
 この実験に用いたTonB欠損株はその遺伝子tonBの変異率に応じ9株を用意した。 これらの変異率の減少と、遺伝子の破壊の程度には相関があった。

supFの変異種類
GC->ATAT->GCGC->TAGC->CGAT->TAAT->CG
WT1871146711
ΔSodA、ΔSodB2201833189
ΔSodA、ΔSodB、ΔFur5249101024


≪文献≫
The Journal of Biological Chemistry, 1999, Vol.274, No.49 34832-34837
Role of Iron and Superoxide for Generation of Hydroxyl Radical, Oxidative DNA Lesions, and Mutagenesis in Esherichia coli
Tatsuo Nunoshiba, Fumiko Obata, Antoine C. Boss, Shinji Oikawa, Toshiaki Mori, Shousuke Kawanishi, Kazuo Yamamoto

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