DNA ligaseのAP lyase活性

 APサイトにAP endonucleaseが作用すると5'-deoxyribose phosphate(dRP)が生成される。 この5'-dRPはAP lyaseによるβ-eliminationによって除去される。β-eliminationはSchiff base中間体を経て起きる反応であり、NaBH4によりDNA酵素複合体をトラップする ことができる。この反応機構による検出およびdRP遊離の直接的検出によりT4 DNA ligaseが AP lyase活性を持つATP依存DNA ligaseであることがわかった。このAP lyase活性はATPにより 阻害を受ける。このことからadenylateされたLysがligaseおよびlyase活性に関与していること が示唆される。

 APサイトに対しAP endonucleaseとAP lyaseが働くと1塩基のギャップが形成される。これは DNA polymeraseとDNA ligaseの働きによりDNA鎖が埋められる。DNA ligaseの反応機構は触媒基 であるLysがadenylationされ、それがニックの5'側に移される。そして5'に移されたAMPの加水 分解によるエネルギーでphosphodiester bondが形成される。

 今回T4 DNA ligaseは5'末端にニックの入ったAPサイトに対し活性をもつことがわかった。ATP 存在下ではAPサイトに対しligase活性を持ち、ATP非存在下ではlyase活性を持っていた。


 X. laevis DNA ligase I、mtDNA ligase、T4 DNA ligase、T7 DNA ligaseをATP存在下 、APサイトアナログである3-hydroxy-2-hydroxymethyltetrahydrofuranを含み、その5'側にニッ クの入った基質を反応させた。結果、どの場合にもligation反応が検出できた。
 ATP非存在下、T4とT7 DNA ligaseを5'側にニックの入ったAPサイトに対しNaBH4の 存在下で反応させるとSchiff base中間体がトラップされた。これはATP存在下ではトラップでき ず、MgCl2が1mM含まれるとトラップ量が多く、5mM 2や1mM EDTAの存在で 少なくなることがわかった。
 実際にAP lyase活性によりdRPが遊離されていることを冷TCA存在下のエタノール抽出で検出し た。その結果、dRPの遊離は時間に対し比例し、最適温度は37℃付近、ATPの共存で遊離量が減少 することがわかった。
 これらによってDNA ligaseがAP lyase活性を有することがわかったが、その活性残基は不明で ある。しかしATPの存在で活性が阻害されることから何らかの形でligase活性に使われているLys が関与していることが考えられる。

 DNA ligaseによるAP lyase活性が生体内で働いているかどうかもわかっていない。細胞内で生 じたAPサイトはAP endonucleaseの働きによりすみやかに5'側にニックが入れられる。ここで、ATP 非存在下ではDNA ligaseはAP lyaseとして働きdRPを遊離し、1塩基ギャップを形成する。
 細胞内ではadenyl化したDNA ligaseが多く存在することから、5'にニックの入ったAPサイトは 再びニックが埋められる。埋められた直後ではDNA ligaseはまだDNAに結合したままであり、かつ adenyl化されていない。そのためAP lyase活性によりAPサイトの3'側にニックが入る。
 実際にこの反応をT4 DNA ligaseで見たところAPサイト5'側のニックが3'側に移ることが確認で きた。


≪文献≫
The Journal of Biological Chemistry, 1998, Vol.273, No.14 7888-7893
The Action of DNA Ligase at Abasic Sites in DNA
Daniel F. Bogenhagen, Kevin G. Pinz

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