DNAのlagging鎖とleading鎖、どちらに8-OGが取り込まれるか

 DNA傷害の1つにguanineの酸化による7,8-dihydro-8-oxoguanine(8-oxoguanine, 8-OG) が知られている。8-OGはDNA複製時にCytsine(C)やAdenine(A)と対を形成する。そのた め、C:G対が酸化傷害を受けC:GOとなった場合、複製によりA:GOが生じ、さらに複製すると A:Tになる。このためC:G->A:Tのtransversionが発生する。
 また、複製時の塩基はdNTPとしてポリメラーゼに供給される。このdNTPの内、dGTPが酸化 されることで生じる8-oxodGTPも同様にCやAと対を形成する。すなわち、A:Tの複製時に 8-oxodGTPが取り込まれることによりA:GOが生じ、さらに複製するとC:Gになる。このため A:T->C:Gのtransversionが発生する。
 これらの酸化傷害を修復する酵素としてMutT、MutM、MutYが知られている。
 MutTは、8-oxodGTPを8-oxodGMPに分解する酵素であり、分解された産物はDNA中に取り込ま れないので酸化傷害を未然に防ぐ。
 MutMは、C:GOからGOを取り除くことでC:AP(AP; APサイト,塩基の無い部位)とする。 生じたAPサイトはendonucleaseにより除去され、ポリメラーゼでGを埋めることで修復する。
 MutYは、A:GOからAを取り除くことでAP:GOとする。生じたAPサイトはendonucleaseにより 除去され、ポリメラーゼでCを埋めさせC:GOとする。後はMutMにより修復される。

 この論文では、これらの酸化傷害修復酵素の内、MutMとMutYを欠損するSY302株とMutTを 欠損するSY11株を用いて実験を行なっている。SY302ではMutMとMutYを欠損するためC:G->A:T の変異が多く、SY11ではMutTを欠損するためA:T->G:Cの変異が多く発生する。この変異を プラスミドpSV2neoに組み込んだsupF遺伝子を使い定量した。また、supFを入 れる方向は順方向のpTW-F、逆方向のpTW-Rを用意した。

≪SY302株(MutM, MutY)≫
 supFの133,159,168,169部位のGがG:C->T:Aに変異する率が高い。
 この内133,168,169は翻訳側のストランドであり、leading鎖、lagging鎖のどちらにも 同程度の率で変異が起きた。すなわち、8-OGの取り込みにストランド依存性は見られなかっ た。

≪SY11株(MutT)≫
 supFの135,165部位のAがA:T->C:Gに変異する率が高い。
 これらの部位は非翻訳側のストランドであり、leading鎖、lagging鎖のどちらにも同程度 の率で変異が起きた。すなわち、8-oxodGTPの取り込みにストランド依存性は見られなかった。


 以前の報告では、-1 frame shiftとAT->CGはlagging鎖に多いこと。GC->AT、GC->AT、AT->TA 、AT->GCがleadingで多いことが報告されている。これらの結果は今回の結果とは異なっているが、 前者では8-OGが変異原かどうか不明であること、後者はC:Tミスマッチ対を実験に用いていること などが原因だと考えられる。


≪文献≫
Mol Gen Genet, 2001, Vol.264 836-841
Miscoding and misincorporation of 8-oxo-guanine during leading and lagging strand synthesis in Esherichia coli
T. Watanabe, G. van Geldorp, T. Najrana, E. Yamamura, T. Nunoshiba, K. Yamamoto

カテゴリー「論文紹介」 のエントリー