へリックスの安定化予測とタンパク質の安定性

 タンパク質の安定化を行なう1つの方法に2次構造の安定化が挙げられる。Helix-Helix間 の変異実験によってΔGを安定化の方向へ持っていくことに成功したこともあるが、それら はアミノ酸のHelixを形成する傾向とは必ずしも関連性がなかった。
 一般的に溶媒に露出している残基を変更し2次構造形成傾向を高めると、タンパク質全体 の安定性も増加する。過去数年間でhelix形成に関わる相互作用が実験的に明らかになりつ つある。これらを元にHelix/coil transitionアルゴリズムに基づいたAGADIRが作製された。 AGADIRを用いれば残基レベルで水系でのHelixをかなり正確に予測することが出来る。
 今回はこのAGADIRを改良したAGADIRms及びα+βタンパク質であり81残基と小さい human procarboxypeptidase A2の触媒ドメイン(ADA2h)を用いてHelixの改変によるタンパ ク質の安定化を行なった。

 ADA2hに含まれる2つのHelix領域Helix1およびHelix2について、その溶媒に露出している 残基に変異デザインをAGADIRmsを用い行なった。予測では水溶媒、pH5.2、4℃という条件 でHelix1はWTのHelix含量が16%から63%に、Helix2では4.5%から44%にそれぞれ増加すると 求まった。また、このときの安定化エネルギー変化はHelix1で-1.56kcal/mol、Helix2で -2.54kcal/molと求まった。
 これらの値から、AGADIRmsによる予測が正しいのであればHelix2の方がHelix1よりも大 きく安定化される。


 合成ペプチドを用いWTおよびHelix1とHelix2のそれぞれのCD測定を行なった。その結果、 WTでは27%であったHelix含量がHelix1では57%であった。Helix2についてはpH13以下では 溶解せず、また濃度によりCDが異なるために測定できなかった。

 同じ合成ペプチドをNMRにより解析した。その結果、Helix1ではWTも変異体もともにGlu5 ~Glu18の範囲でCαがHelix構造を示していた。Helix2ではペプチドの沈殿のため測定でき なかった。

 これらのデザインした変異を実際にADA2hに適応し、そのタンパク質の安定性を蛍光測定 によるUrea変性実験により測定した。その結果、WTよりもHelix1は0.7kcal/mol、Helix2は 1.0kcal/molだけ安定化した。また、ΔG=ΔGH2O-m[Urea]で表さ れるmはWTの0.95kcal/mol/Mに比べそれぞれ0.85と0.81kcal/mol/Mと小さかった。mが小さ いということから変性状態がより安定化しているか、変性状態とネイティブ状態の中間体を 安定化しているかであることが考えられる。

 今回の結果ではHelix1と2とで予測されたΔGは-1.56と-2.54kcal/molに対し、実測値は それぞれ-0.72と-0.97kcal/molとほぼ半分の値だった。これらの理由として3つが考えら れる。

1.予測と実測でのHelix含量の違い
 AGADIRmsではHelix1をWTで16%、変異体で63%と予測したが、ペプチドでの実測値はそれ ぞれ27%と57%だった。この差はtwo-state systemで0.6kcal/mol、helix/coil transition theoryでその約2倍に相当する。

2.極性残基導入による影響
 今回の変異実験ではLysやHisを複数導入している。それらによる長距離の相互作用によ る影響が考えられる。

3.
 今回の変異実験ではlocal interactionが安定するように変異を導入している。そのため folded stateだけでなく、unfolded stateをも安定化してしまったことが考えられる。この 影響はmに現れ、helixが安定化するとmが小さくなるというデータがある。しかしながら、 JohnsonやFershtによるとmはUrea濃度にも関係するという報告もある。そのため確かなことは言えない。



≪文献≫
Folding & Design, 1995/1996, Vol.1, No.1 29-34
Stabilization of proteins by rational design of α-helix stability using helix/coil transition theory
Virtudes Villegas, Ana Rosa Viguera, F Xavier Aviles, Luis Serrano

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