ミトコンドリア内塩基除去修復におけるPolγのdRP lyase活性

 ミトコンドリアに唯一存在するポリメラーゼであるDNA polymerase γ (Polγ)はミトコンドリアDNAを酸化傷害から守る塩基除去修復(BER)に必要 である。ヒトPolγの触媒サブユニットの実験から、APサイトの5'側が切断され ている5' terminal deoxyribose phosphate(dRP)を除去(dRP lyase)し、ポ リメラーゼ活性により塩基を取り込むという2つの活性があることが分かった。 これらの反応により生じたプロダクトはDNA ligaseによりDNA鎖が結合され正常 なDNA鎖となる。
 またdRP lyase活性に2価金属イオンが必要では必要でないこと、NaBH4 によりSchiff baseがトラップされることも分かった。


 uracilを含んだDNA基質をuracil-DNA glycosylase(UDG)およびAP endonuclease (APE)で処理することで生じる5'側に切れ目のあるAPサイトをRIラベルしたdNTP 存在下、PolγとDNA ligaseを反応させるとdRPの除去、塩基の取り込み、DNA鎖 の結合が行われた。このとき37℃での反応ではPolγの3'->5' exonuclease活性 が見られたが、15℃および25℃ではexonuclease活性は見られなかった。

 3'ラベルの基質を用いた実験では10nM Polγまでは反応を見ることができたが、 50mM以上ではexonuclease活性によりラベルが外れてしまうため反応を見ることが できなかった。exonuclease活性を阻害するためEDTA存在下で反応させたところ、 高濃度の酵素でもdRP lyase活性を見ることができた。またexonucleaseを欠損し た変異体を用いたところEDTA非存在下でもdRP lyase活性を見ることができた。  これらのことからdRP lyase活性はpolymerase活性とは独立して存在し、二価金 属イオンを要求しないことが分かった。またこの活性がほかの酵素のコンタミに よるものではないことは10~30% sucroseの遠心沈降法により確かめた。

 PolγによるdRP lyase活性の見かけのKmは0.6μM、kcatは0.26min-1 だった。Polβの値はKmは0.5μM、kcatは4.5min-1と報告 されている。Kmはほぼ同じだがPolγのkcatは17倍も低い。このこと とPolγによる塩基の取り込み速度(Km=7μM、kcat=4.5sec-1) を考えるとヌクレオチド除去修復に対して担っているPolβの役割を、塩基除去修復 においてはPolγが担っているのではと考えられる。DNA ligase Iを過剰量加えても 塩基が取り込まれただけでDNA鎖がつながっていない状態の中間体が多く蓄積される ということとも一致している。

 NaBH4によるSchiff baseのトラップ実験を行った結果、トラップするこ とができた。熱処理をしたPolγではトラップできなかったことからSchiff baseの 形成には酵素の立体構造の維持が必要であることが分かった。これらのことから Polγはβ-eliminationによってDNA鎖を切断していることが分かった。

 PolβのアクティブサイトはHelix-hairpin-Helixモチーフに含まれている。Polβ とPolγの配列をアラインメントしたところこのモチーフに相同性が見られた。Polγ のこの領域に存在するK371はPolβでSchiff baseの形成に使われていると考えら れているK72に相当している。この残基がPolγでの触媒残基となっていのかもし れない。


≪文献≫
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998, Vol.95, 12244-12248
Identification of 5'-deoxyribose phosphate lyase activity in human DNA polymerase γ and its role in mitochondrial base excision repair in vitro
Matthew J. Longley, Rajendra Prasad, Deepak K. Srivastava, Samuel H. Wilson, William C. Copeland

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