ストップトフローによるFpg酵素反応解析

 Formamidopyrimidine-DNA-glycosylaseはFpgとも呼ばれ、formamidopyrimidineや8-oxoguanine によるDNA傷害の修復に働いている。FpgはN-glycosidic bondを加水分解するDNA glycosylase 活性、β-eliminationで起きるAP lyase活性そしてδ-eliminationによるAP lyase活性を持つ。
 FpgはTrpを5つ持つ。励起波長293nmで蛍光を測定すると傷害を含まないDNAとFpgの相互作用に よってFpg由来の蛍光強度が低下する。このことを利用しストップトフローにより酵素反応を解析 した。

 8-oxoguanineを含む基質DNAとFpgとの特異的な反応を見た。その結果、0~20msに分子衝 突によると考えられる第1フェーズ、1sec前後にピークがある100ms~2secの第2フェーズ、10~ 50secにネガティブピークのある2~100secの第3フェーズが見られる。更に、約100secにおける 蛍光強度の回復度が基質DNA濃度が~1.5μMのsingle turn-overととそれ以上のmulti turn-over とで変わることからここが第4フェーズと考えられる。また最後の第4フェーズは生成物とFpgと の相互作用によると思われる。


 これらの第1~4フェーズに関わる速度定数をk1~k4と置き、酵素反応 を模式化すると以下のようになる。


 傷害を含まないDNAを用いることで、Fpgと非特異的基質DNAとの相互作用を見た。その結果、 0~10msまで蛍光の低下が見られ、その後は一定の強度となった。この反応はFpgとDNAの分子衝突 によるものであり、可逆的であることが考えられる。
 Fpgと非特異的基質DNAとの相互作用に関わる定数を計算した。値は左式により求めた。結果は
k1=2.3×108M-1s-1
k-1=2.7×103s-1
Kd=12μM
となった。

 Fpgと特異的基質DNAとの相互作用に関わる定を計算した。結果は
k1=3.2×108M-1s-1
k-1=8.9×102s-1
Kd=2.8μM
となった。非特異的DNAと比較するとk1はほぼ同じ値であり、k-1が異なる ことがわかる。このことから、この反応は分子衝突によるものであることがわかった。



 第2フェーズにおけるk2を基質DNA濃度に対しプロットすると、濃度とともにk2 が大きくなり、k2=11s-1付近で飽和する。このことからこのフェーズは可逆 反応であることが示唆される。

 同様のプロットを第3フェーズにおけるk3でプロットすると、k3=0.15s-1 付近で一定であり基質DNA濃度に依存しなかった。このことからこのフェーズはおそらく不可逆反応で あることが示唆される。

 第4フェーズにおけるk4は基質DNA濃度に反比例していた。またこの濃度依存性はストップ トフローでなく電気泳動によるプロダクトの生成にも見られることからこれが最終段階かつ律速段階で あることが示唆される。

 k1からk4までのそれぞれをフィッティングした結果が以下である。


 この式から求まる解離定数Kd=1.3μMであり、先の電気泳動の結果から求まった8-oxoguanineに対す るKm=2.0μMとほぼ一致した。


≪文献≫
Biochemistry, 2002, Vol.41, No.5 1520-1528
Stopped-Flow Kinetics Studies of the Interaction between Escherichia coli Fpg Protein and DNA Substrates
Olga S. Fedorova, Georgy A. Nevinsky, Vladimir V. Koval, Alexander A. Ishchenko, Nataly L. Vasilenko, Kenneth T. Douglas

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