H. Adenine Glycosylase: MutY、MYH

 これはレビュー:塩基除去修復の一部です。


H. Mismatch-specific Adenine Glycosylases: MutY and MYH(p.1233-1235)

 E. coliにおけるミスマッチ修復系としてMutS、MutH、MutLの系がよく知ら れている。この系ではGATCのメチル化を見ることで鋳型鎖と複製鎖とを区別し、ミス マッチ塩基のうちメチル化されていない複製鎖の塩基を除去する。
 1980年代に入りE. coliにおいてG:Aミスマッチをメチル化によらずG:Cへと 修復する活性が見つけられた。さらにMillerらによりG:C->A:T transversionの実験か らmutYが同定された。後になりMutYがG:AミスマッチからAを除去するadenine glycosylaseであることが分かった。
 MillerとMichaelsにより酸化傷害により形成される8-oxoguanine(OG)による突然変 異の抑制をも担っていることが明らかにされた。mutMもしくはmutYを欠 損するとG:C->T:Aが多く起きる。また両方の欠損は各々の合計よりも変異率が高い。こ のことから、MutMとMutYが共同してG:C->A:Tを抑制し、またMutYは細胞内でOG:Aを修復 することが示された。DNA中にOGがあると複製の際、DNA polymeraseがadenineをOGの対 として取り込んでしまうために突然変異が起きる。もし修復されないと次の複製の際に GからTへと変異が起きる。MillerとMichaelsはMutMとMutYによる修復系を「GO repair system」と名づけた。MutSによるミスマッチ修復系やpolymerase III(mutD)に よるEditing系の欠損時の突然変異率の増加よりもMutM/MutY系の方が変異が多く起きる。 そのためE. coliにおいて重要な修復系であると考えられている。
 OGがDNAに取り込まれるのを防ぐ3つ目の修復酵素がdOGTPaseであるMutTだ。この酵素 は細胞内のdNTP poolからdOGTPを除去することでadenineの対としてOGが取り込まれるの を抑制する。
 MutYはミスマッチ塩基対から傷害を受けていない塩基を除去するglycosylase活性を 有する珍しい酵素だ。またMutYはin vivoでもC:Aミスマッチからadenineを除去 することが報告されている。このときの活性はG:A基質に対し5~35倍低い。MutYが活性 を示す基質が多く報告されている。これらのほとんどは細胞内でのMutYの役割に対して はあまり重要ではないが、基質認識機構や反応機構を考える上で貴重な情報となってい る。
 MutYの基質認識においてはミスマッチのどちらの塩基も重要だが、慨してadenineの 変化に弱い。OGの代わりにOA、8-methoxy-2'-deoxyguanosineやinosineを使ったり、 adenineの場合にもinosineや2-aminopurineを用いて実験を行なった。その結果、全て の場合において、修飾塩基を除去する活性は対となる塩基に依存しOGにより活性が促進 された。
 しかしながらこれらの基質における比活性は研究者ごとに異なっている。例えばLuら やManuelらはG:Aの方がOG:Aよりも活性があるとしている。Bulychevらは反対の結果を 報告している。これらの相違はglycosylase活性の測定法にある。Bulychevらはほかの 報告では行なっていない方法を用いている。それはMutYがβ-lyase活性を有するかどう か結論が得られていないからである。もしMutYの活性においてglycosylase活性とlyase 活性が共役していないのであれば、主鎖の切断量はglycosylase活性による産物量よりも 少なくなる。glycosylase活性を主鎖の切断量で測定するときに後処理により切断を行な っているかの違いによる。また、ほかの問題としてMutYのturnoverの低さがある。MutY はOG:Aからadenineを除去した後にできる生成物と強く結合する。このためA:GよりもA:OG 基質のときの方がturnoverが低く、glycosylase活性の測定に用いる酵素量によって結果 が大きく変わる。加えてkcatが化学反応よりもむしろ酵素の解離に支配され る。single-turnover条件下ではMutYのglycosylase活性はG:AよりもOG:Aの方が高い。
 OG:AとG:A基質におけるKd値を比較してもOG:Aの方が好ましい基質と考えられる。しか しながら、Kdも酵素のturnoverおよび基質と生成物の混合比に影響を受ける。切断されな いadenineアナログである2'-deoxyfurmycin A(F)を用いた研究からMutYはG:FよりもOG:F に対する方が~30倍強く結合することが分かった。このこともMutYがOG:Aにより働くこ とを示唆している。
 MutYはEndoIIIとホモロジーが高い。MutYのtrypsinやthermolysinによる限定分解によ りそれぞれ26kD、25kDの安定なフラグメントを得ることができる。これらはEndoIIIと相 同性がないC末が除去されている。25kDのMutYはOG:Aに対する結合能が低下していた。こ のことによりC末ドメインはOGの認識に働いていると考えられた。しかしながら、26kDの MutYでは同様の結果を得られなかった。この結果の相違も酵素のturnoverと測定方法の 違いによるものだと思われる。
 ヒトでもMutYホモログMYHが得られている。MYHはE. coli MutYと41%の相同性 があり、基質特異性も細菌のものと似通っている。面白いことにMYHはG:AよりもOG:Aに 対してより強く結合するが、OG:Aに対するよりもG:Aに対して2倍活性が高い。これらの 結果もturnoverや測定法に影響を受けていると思われる。


【MutYのGlycosylase活性における8-oxoguanineとのミスマッチ基質】


【MutYのGlycosylase活性におけるadenineとのミスマッチ基質】




≪文献≫
Chem. Rev., 1998, Vol.98, No.3 1221-1261
Chemistry of Glycosylases and Endonucleases Involved in Base-Excision Repair
Sheila S. David, Scott D. Williams

カテゴリー「論文紹介」 のエントリー