AP lyase反応機構とNaBH4

 APサイトを含むDNA基質に対してlyase活性を持っているT4-pyrimidine dimer glycosylase(T4-pdg)を用い、NaBH4によるSchiff baseのトラップ、APサ イトアナログであるmethyl-deoxyribofuranoseを用いAP lyaseの反応機構を調べた。

 AP DNA基質にT4-pdgとNaBH4を加えるとSchiff baseがトラップできる。し かし、先にNaBH4を加え、後からT4-pdgを加えたときにはトラップできない。 NaBH4は開環型のアルデヒドを還元し閉環する。このためNaBH4 がT4-pdgと競合し反応性の低い閉環型を生成していると考えられる。
 競合していることを確かめるため活性はないが結合活性は維持しているE23Qを用い 実験を行なった。その結果、NaBH4の非存在下E23QはWTの活性を阻害するこ とはなく、NaBH4もE23QもAP endonucleaseを阻害することはなかった。この ことから酵素と基質の結合はNaBH4の作用を立体的に阻害しているわけでは なく、競合している可能性が高いことが分かった。

 ほかのDNA修復系酵素とAPサイトとのトラップ実験を行なった。結果、cv-PDG、FPG、 Endonuclease IIIではSchiff baseがトラップでき、MutYではトラップできなかった。


 糖が閉環型のままで存在するAPサイトアナログであるmethyl deoxy-D-ribofuranoseを 用い、αアノマーとβアノマーのどちらがより反応性が高いかを調べた。


 4℃で2週間反応させたところ、反応性生物は56%で飽和状態に達した。今回用意したAP サイトアナログはα:β=1:2のため、βアノマーがほぼ全て反応し、αアノマーに対 する反応性はないと考えられる。このときの反応はαattackであり、in planeではないと 考えられる。

 AP DNA基質と10~60mMのNaBH4の反応溶液にT4-pdgを加えることで、トラ ップ率とNaBH4濃度の影響を調べた。その結果、これらの間には直線関係が あることが分かった。
 閉環型APサイトアナログに対する反応性の低さから、AP lyaseが開環型ヘミアセター ルから開始することが考えられる。

 E23Qの結合はNaBH4による開環型の還元を妨げることはない。今回の反応条件 下では酵素と基質の結合速度はNaBH4による糖の還元や開環速度よりも数倍遅い。 furanose環の開環速度はpH6.2、25℃で58.5s-1であり、100mMNaBH4 による還元速度pH6.8では0.06s-1だった。つまり開環はNaBH4による 還元よりも1000倍速く進行する。ただし、このデータはDNA中における速度ではない。しかし ながら、これらの数字を比較するとNaBH4による還元が律速になっている可能性 も否定できない。



≪文献≫
Biochemistry, 2001, Vol.40, No.2 561-568
The Reaction Mechanism of DNA Glycosylase / AP Lyases at Abasic Sites
Amanda K. McCullough, Ana Sanchez, M. L. Dodson, Praveen Marapaka, John-Stephen Taylor, R. Stephen Lloyd

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