非極性adenineアナログとMutYの基質認識



 これまでに2'-deoxyadenosineのアナログである2'-deoxyformycin A(F)、 7-deaza-2'-deoxyadenosine(Z)、2'-deoxy-2'-fluoroadenosine(FA)を用いMutYとの結合 を調べた報告がでている。今回はAdenineやZの非極性アナログである 4-methylindole β-deoxynucleoside(M)とMutYの結合を調べた。

30mer DNAとMutYとの解離定数Kd
WT (nM)Stop225 (nM)
OG:M0.171.4
OG:Z3.415
OG:FA0.1290
G:M4020
G:Z3521
G:FA5.880
G:C150130

 MutYのOG:Mに対するKdは0.17nMと小さく、Adenineからほとんど改変のないFAの0.12nM とほぼ同じだった。X線結晶構造解析から予想されているMutYのN末ドメインとAdenine基 質との相互作用が多く存在するにもかかわらず同じ値をとっていることは驚きである。 Adenineに対しする相互作用のうちN7への水素結合を欠いているOG:ZとのKdが3.4nMとOG:M に対し20倍も大きい値を示していた。OG:Mに対して親和性が高いのは、OGとMとの間に水素 結合が形成されていないためかもしれない。水素結合がないために結合する際の塩基フリッ プアウトが容易に起きているのかもしれない。
 Mに対する高い親和性はOGとのミスマッチの場合にのみ見られた。G:MおよびG:Zに対する Kdは40および35nMとほぼ同じであり、200から10倍も親和性が低くなっている。これまで知 られているadenineアナログを用いた実験でも同様の傾向が知られ、OGの認識が重要だと考 えられている。Gとのミスマッチの場合にはG:FAの方が親和性が高くなっていた。また、非 特異的結合であるG:CよりもG:MやG:Zの方が親和性は高かった。

 OGを認識していると考えられているC末ドメインを欠失したStop225とadenineアナログと のKdも求めた。MutYではFAに対する親和性は高かったが、Stop225ではOG:FAもG:FAも親和 性が低く、Kdはそれぞれ90および80nMだった。このことはC末ドメインがOGの認識に働いて いるということと一致している。
 Stop225はOG:Mに対し1.4nMというOG:FAの60倍も高い親和性を示した。これらから、C末ド メインの除去によりOG:Mは8倍、OG:FAは700倍親和性が低くなることが分かった。さらに、 Stop225はWTのときど同様にG:MとG:Zに対しそれぞれ20および21nMとほぼ同じ親和性を示し た。ZとFAではOGとGとでほぼ同じKdであったが、MではG:MよりもOG:Mの方が親和性が高かっ た。これらのことはC末ドメインが塩基フリップアウトに関与しているという以前の報告と 一致している。


11mer DNAのTm
Tm (℃)
OG:A55.9
OG:Z49.6
OG:M43.4

 基質DNAの安定性とMutYへの親和性に関係があるかどうかDNAのTmを測定した。結果、OG:A よりもOG:ZやOG:Mの方が不安定であることが分かった。DNA鎖へのMの導入による不安定化に よってMutYの結合に必要な立体構造の変化が起きているのかもしれない。Stop225において OG:MとG:Mの双方に対し高い親和性を示している。この傾向はZでも見られる。WTではZより もむしろFAに対する親和性の方が高いが、Stop225ではZの方が親和性が大きい。これらのこ とからC末ドメインは塩基対の認識と立体構造破壊を担っていると考えられる。
 今回用いたような塩基間水素結合を形成できない疎水的な塩基アナログはこれまでもよ く実験にもちいられている。DNA polymeraseの研究ではdNTPとこのアナログにより、塩基の 取り込みは塩基間水素結合の形成能よりも”形”が重要であるという報告も出されている。 今回の実験結果からMutYは基質認識においてAdenineとの特異的な相互作用は必ずしも必要 でないことが示唆された。しかしながら、これらの相互作用は塩基の除去には必要である。 加えてOGの存在は基質認識において重要な役割を果たしていると考えられる。さらに今回の 結果は塩基がフリップアウトしている間接的な証拠とも考えられる。


≪文献≫
Org. Lett., 2000, Vol.2, No.9 1341-1344
Recognition of the Nonpolar Base 4-Methylindole in DNA by the DNA Repair Adenine Glycosylase MutY
Cindy Lou Chepanoske, Charles R. Langelier, Nikolas H. Chmiel, Sheila S. David

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